はじめに

従業員が前向きに仕事に取り組むことは、当然のことながら組織の成功にとって重要な要素ですが、その中心にあるのが「ワーク・モチベーション」です。これは、従業員がどのようにして仕事に対する意欲を持ち続け、パフォーマンスを発揮するのかを理解するための鍵となる概念です。本記事では、ワーク・モチベーションの基本概念やその理論をわかりやすく解説します。

ワーク・モチベーションとは?

ワーク・モチベーションは、簡単に言うと、従業員が仕事に対して高いレベルの努力を払う意思や心理的なプロセスのことです。心理学者の日詰(2009)は、ワーク・モチベーションを「組織や仕事に関連した目標に向かい高い水準で努力することの意思や心理的プロセスであり、それにより働く人が何らかの欲求を満たそうとすること」と定義しています。

ワーク・モチベーションの代表的な理論

ワーク・モチベーションにはいくつかの理論があります。代表的なものを以下に紹介します。

1. 目標設定理論

ロック・ラザム(1984)によって提唱されたこの理論は、明確で挑戦的な目標を設定することで、従業員のモチベーションが向上することを示しています。明確な目標があると、従業員はその達成に向けて集中しやすくなり、努力を継続しやすくなります。

2. 社会的認知理論

バンデュラ(1979)が提唱したこの理論では、従業員が自分自身の能力を信じ、成功するために必要な行動を取ることができると信じることで、モチベーションが高まるとされています。自己効力感が高い人ほど、困難な状況においても粘り強く取り組む傾向があります。

3. 組織的公正理論

GreenbergとFolger(1983)は、従業員が公正に扱われていると感じることが、ワーク・モチベーションに大きく影響すると述べています。組織内での公正な評価や待遇が欠けていると、不満が募り、モチベーションが低下する可能性があります。

ワーク・モチベーションの二面性

ワーク・モチベーションは、必ずしも常にポジティブな影響をもたらすとは限りません。例えば、仕事に強い意欲を持ち、「この仕事をしたい」というポジティブな気持ちからモチベーションが高まることがあります。一方で、「この仕事をしなければならない」という強迫的な思いから高いモチベーションが維持される場合もあります。このような場合、仕事に対する前向きな姿勢が欠け、結果として心身の健康に悪影響を及ぼすこともあります。

まとめ

ワーク・モチベーションは、従業員が組織で成功を収めるための重要な要素であり、従業員のパフォーマンスに大きな影響を与えます。そして、目標設定理論や自己効力感、組織的公正性といった理論を通じて、モチベーションを高める手法が多く存在してます。しかし、モチベーションが常に前向きであるわけではなく、時には強迫的な働き方につながることもあるため、組織としてはそのバランスを意識する必要があります。