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はじめに
これまでのブログでは、ワーク・エンゲイジメントのポジティブな側面を中心に説明してきました。しかし、同じように仕事に没頭する状況でも、ネガティブな影響をもたらす可能性がある「ワーカホリズム」が存在します。今回は、ワーカホリズムの定義とそれが従業員や組織に与えるリスクについて書いていきます。なお、こちらは大塚先生の「働く人にとってのモチベーションの意義」[2017]を参考にしております。

ワーカホリズムとは?
ワーカホリズムとは、仕事に過度にのめり込む状態を指し、強迫的に働き続ける傾向があります。Oates[1971]が提唱したこの言葉は、アルコホリズム(アルコール依存症)になぞらえ、仕事に対する依存を表現しています。
ワーカホリズムには、2つの側面があります。
- 働きすぎ: 仕事の量が多く、時間を競争するように働く傾向が強い状態を指します。
- 強迫的な働き方: 仕事に対して強い衝動や義務感を感じ、やめられない状態です。「やらなければならない」という思いにとらわれてしまい、常に仕事に追われる感覚を持ちます。
ワーク・エンゲイジメントとの違い
ワーク・エンゲイジメントとワーカホリズムは、どちらも仕事に対する高い没頭を特徴としていますが、大きな違いがあります。ワーク・エンゲイジメントはポジティブな心理状態を伴う一方で、ワーカホリズムはストレスやメンタルヘルスに悪影響を及ぼすことが多いです。
具体的には、ワーカホリズムに陥った従業員は、仕事からの心理的な距離を取ることが難しく、終業後や休日でも仕事のことを考え続けてしまう傾向があります。その結果、長時間労働や心身の不調を引き起こし、最終的にはパフォーマンスの低下を招くリスクが高まります。
ワーカホリズムのリスク
ワーカホリズムがもたらす主なリスクは、従業員自身の健康だけでなく、組織全体にも悪影響を及ぼすことです。
1. メンタルヘルスへの悪影響
ワーカホリズムは、うつやストレス、疲労感などの精神的な問題を引き起こしやすいとされています。特に「強迫的な働き方」が強い場合、仕事に対する強い義務感やプレッシャーが従業員の心身に負担をかけ、結果としてメンタルヘルスを悪化させる危険性があります。
2. 長時間労働とパフォーマンスの低下
ワーカホリズムの状態では、労働時間が長くなる一方で、仕事の効率が低下することが多くなります。仕事に対する焦りや強迫観念が集中力を奪い、パフォーマンスの低下や生産性の減少を引き起こします。結果的に、組織全体の成果にも悪影響を与えることがあります。
3. 仕事とプライベートのバランス崩壊
ワーカホリズムは、仕事と私生活のバランス(ワーク・ライフ・バランス)を崩壊させます。家族や友人との時間を犠牲にし、休息やリフレッシュができない状態が続くことで、従業員の満足度や生活の質が低下します。
まとめ
ワーカホリズムは、仕事に没頭しすぎることで心身の健康を損ない、最終的には仕事のパフォーマンスにも悪影響を及ぼします。従業員が自分自身の健康や仕事の進め方を見直し、組織としても健康的な働き方を推奨する取り組みが必要です。